- 昭和62年卆 西山元章
合氣道部を卒業して37年。60歳を前に、昨年・今年と二年連続で寒稽古に皆勤することができました。そうしたところ、同期の多田君から「できたら、三田会のHPにコラムを寄稿してくれないか」という依頼があり、せっかくの機会なので、寒稽古に参加してみて、感じたことなどを少し書かせてもらうこととしました。
「久しぶりに寒稽古に出てみよう」と思ったきっかけは、年賀状です。最近は、年賀状のやりとりなど時代遅れのようになっていますが、合氣道部の先輩、同期、後輩との年賀状には、毎年々々「今年こそは蝮谷に顔を出そうと思います!」と書き添えながら、毎年「有言不実行」を続けてきました。
年賀状を書きながら、「自分の言葉には責任を持たなきゃいけないな」と一念発起。毎朝4時過ぎに起きて、道着を抱えて、蝮谷に向かう日々にチャレンジすることを決意しました。会社では、コロナでリモート勤務が定着し、出勤のために早めに稽古を切り上げる必要がなくなったということも、追い風になりました。
白い息を吐きながら、真っ暗闇の中を歩いていると、自分の現役当時と比べて、どっちが寒いのかなと考えたりもしましたが、体の中の熱量が全く違う現役当時と今を比べても無意味だなと思い、考えるのをやめました。
寒稽古の開始は6時30分。現役当時は6時開始で、慌ただしく道着に着替えたこと、たくさんの部員が遅刻してきていたことを思い出します。現役当時に、なぜ開始時間を6時30分に変更しなかったんだろうと、反省したりもしました。
稽古が始まります。3年ほど前から筋トレを日課にしているので、幸い、体力的につらいということはありません。技も勘所は体が覚えていますし、思っている以上に体は動きます。ただ、前回り受け身、後回り受け身といった「非日常」の動きには、残念ながら、三半規管がついていきません。
それでも、目が回っているのに、必死で受け身の稽古を続けている普通部生や高校生たちの姿を見ていると、「俺だけ楽をする訳にはいかないな」と反省させられ、一日に10回程度ずつですが、道場の隅で受け身の稽古をはじめました。
日に日にできることが増える期間が「成長」で、一日一日できることが減っていくことが「老化」だと言います。まだまだ、老け込む訳にはいきませんし、現役当時、後輩諸君に、春合宿で「コロガリ1000本」を命じた者としての責務(?)もあるしなと思い、細々とではありますが、受け身の稽古を続けました。
最後に、現役部員の皆さんへのメッセージです。合氣道部の稽古には、2つの面があると思います。スポーツ競技としての肉体・技術の鍛錬という面と、武道としての精神の修行という面の2つの面です。
どちらも大切だとは思いますが、学生の皆さんには、合氣道のスポーツ競技の面に重心を置いて、隙のない動きや切れの良い技を磨き、強靭な体を作って、学生合氣道の世界での頂点を目指し続けてほしいなと思っています。
生意気を言うようですが、武道としての修行は、合氣道を「生涯武道」としてとらえられる年齢に達してからでも、十分に取り組む時間はあります。そして何より、私たち合氣道部OBには、蝮谷道場という、40歳ちかく年の離れた若者たちと、いつでも一緒に汗を流せる場所、「帰ってこれる場所」があるのですから。
柄にもないようなことを言うようですが、こんなオッサンと一緒に寒稽古をしてくれた、現役部員の皆さん本当にありがとう!これからも、蝮谷にちょくちょく寄らせてもらいます。