平成28年卆 小柴 義文

 2022年度末に5年半務めたコーチを退任させていただきました。
 現在30歳の私は、慶應の合氣道部に中高大と10年間現役部員として所属していた為、合計在籍期間が15年半になり、これまでの半生の半分以上を過ごした事になります。
 趣味関心の幅が狭く無趣味な自分がここまで続いたのは、とにかく楽しかったから、という理由に外ならず、大変充実した時間を過ごさせていただきました。

 高い目的意識を持っている学生の前では、元コーチとして言いづらいのですが、私は特に強い目的意識などは無く、ただ楽しいから我武者羅に稽古に取り組んできました。
 それでも「好きこそものの上手なれ」とは上手く例えたもので、振り返ってみると知らず知らずに本当に多くのものを得られたのだと感じています。

 その中でも特に社会人でも活かせるスキルが「人を導く」という事だと思います。
 「心身統一合氣道は、氣を導いて相手を投げる武道です」と心身統一合氣道会のホームページに記載がある通り、相手を投げるという稽古を重ねるうちに自然と相手の氣を導くスキルが得られるのだと個人的に解釈しているのですが、このスキルの得難さと未熟さを感じたのが、まさに5年半のコーチ生活でした。

 学生とのコミュニケーションは、現役時代は週6回対面で会うのが当たり前でしたが、コーチになり週1回に減り、新型コロナウイルスの蔓延により更に機会を減らしました。
 コミュニケーション不足とめまぐるしい状況の変化により、学生が何を望んでいるのか見えなくなる事も多くなっていきました。

 非対面のやり取りも難しく、コロナ禍の活動再開判断など監督・コーチ・部員間でも意見が分かれる機会が増え、オンラインミーティング上で別の人に向けたつもりだった私の発言で学生と少し揉めたのも、コーチ時代の大きな失敗談の一つです。
 また個人的には望んでいないのですが、コーチとしてのキャリアと年次を重ねることによって、段々と何気ない発言が重く受け止められてしまう様な気がしたのも、これまでに無い難しさを感じる経験でした。

 この様な失敗を重ね、何気ないモヤモヤでも早めに取り除いてあげないと苦手意識に繋がる事、そしてそのリカバリーのチャンスが激減している事に気付き、「一回一回の機会に何を残してあげるのか」を意識し始めたのは、コーチのキャリアの中でも最終盤になります。
 ちなみにこれらの経験は、リモートの機会が増える職場においても後輩指導に活かしたり、営業として相手が何を望んでいるのかを改めて考え直したりなど、社会人としてのスキル向上にも活かされています。

 この様に上記に関しては得難さを感じただけで、まだまだ取得中ではありますが、改めてこの部で得られたものも多く、特に人との繋がりは私にとって大きな財産になります。
 15年以上の合氣道部生活には一区切りつけたものの、合氣道生活を止めた訳ではないので、時折フレッシュな学生の皆さんとまた稽古出来ればと考えています。その際にはコーチの看板は下ろした為、私の話は聞き流してもらう程度にしてもらいたいと思います(笑)